2011/12/28〜 最終更新日 2014/08/17
〜 学力を伸ばし,豊かな心を育む授業づくり 〜
《設定理由》
新学習指導要領では,生きる力を育むことを目指し,基礎的・基本的な知識及び技能を習得させ,これらを活用して課題を解決するために必要な思考力,判断力,表現力等を育むとともに,主体的に学習に取り組む態度を養うため,言語活動を充実することとしている。さらに,言語は知的活動(論理や思考)の基盤であるとともに,コミュニケーションや完成・情緒の基盤であると明記され,各教科において言語に関する能力を高めていく指導が求められている。
言語活動は聾学校においても教育の根幹をなすものであり,聾教育ならではの言語指導の在り方が長年にわたり研究され,実践されてきた。
障がいのある子どもの教育をめぐっては,障がいの重度・重複化や多様化の中で,本人や保護者の教育に対するニーズが高まってきている。そのような流れを受けて,平成19年4月に試行の学校教育法の一部改正により,従来の特殊教育から特別支援教育への転換が図られ,今まで以上に一人一人の幼児児童生徒の教育的ニーズに応じた適切な指導及び必要な支援を行うことが求められるようになってきた。現在,聾学校においても障がいの多様化が進み,個に応じた指導がより一層必要とされている。このような中,聾学校においては,聾教育の中で長年培われてきた言語教育の技術や知識をいかしつつ,幼児児童生徒一人一人の実態や能力に即した言語活動をいかに充実させていくかが課題となっている。
本大会では,特別支援教育に求められる一人一人に応じた言語活動を充実させるための指導実践を探求したいと考えた。学習指導要領に明記され,聾教育においても重要な課題である言語活動を通して,学力を伸ばし,豊かな心を育むにはどのような授業づくりが必要かについて研究協議を深めたいと考え,本主題を設定した。
公開・指定授業
研究協議・分科会
会場 | 公開授業 | 指定授業 |
神戸聴覚特別支援学校 | 幼・小・中・高・専 | 小・中・高 |
姫路聴覚特別支援学校 | 幼・小・中・高・専 | 小・中・高 |
こばと聴覚特別支援学校 | 保・幼 | 保・幼 |
研究協議(指定授業)分科会 | 助言者 | |
神戸聴覚特別支援学校 | 小学部 | 武居 渡 先生(金沢大学 人間社会研究域 学校教育系 准教授) |
中学部 | 井上 正人 先生(神戸親和女子大学 児童教育学科 初等教育学コース 教授) | |
高等部 | 藤本 裕人 先生(国立特別支援教育総合研究所教育支援部上席総括研究員) | |
姫路聴覚特別支援学校 | 小学部 | 井坂 行男 先生(大阪教育大学 教育学研究科 教授) |
中学部 | 長南 浩人 先生(筑波技術大学 障害者高等教育研究支援センター 准教授) | |
高等部 | 石原 保志 先生(筑波技術大学 障害者高等教育研究センター 教授) | |
こばと聴覚特別支援学校 | 保育相談部 | 庄司 和史 先生(信州大学 全学教育機構教職教育部 准教授 ) |
幼稚部 | 松本 末男 先生(筑波大学附属学校教育局 教育長補佐 筑波大学教授) |
【「公開・指定授業」及び「授業研究分科会」のある学校】
授業を公開する部・・・保育相談部・幼碓部・小学部・中学部・高等部・専攻科
指定授業・授業研究分科会を行う部・・・小学部・中学部・高等部
【助言者】
昭和6年に開校し、平成26年には開校84周年を迎える。現在、幼児児童生徒の数は107名。本大会の主管校であり、保育相談部・幼稚部・小学部・中学部・高等部全ての部で公開授業と指定授業を行う。寄宿舎も一般公開する。
平成25年度には、全国初の学科としてコミュニケーションデザイン科を開設した。また、念願であった小学部棟の新築工事が今年度中に終了し、新しい校舎で大会を迎えることになる。
「言語的感性を高め、考える力を育む」
「9歳の壁」に代表されるように、聴覚障害児は「言語を用い、すじ道を立てて考える」ことが苦手であると言われる。何が彼らの思考を阻み、また、何が思考を促進しうるのか? 思考の材料としての「語彙」や「情報(経験や既得の知識)」、思考を支える「考え方のパターン」、思考の場としての「教室の人間関係や環境」などを検証しながら、豊かな思考活動や豊かな言語活動に導く授業実践を探求していきたい。
【各部の研究テーマ】
@ 電車・バス JR、山陽電鉄「垂水」駅 下車 − 山陽バス「垂水東口」(名谷行又は学園都市行) −バス停「クラブ前」又は「千鳥ヶ丘下」(約5分)下車すぐ
A 地下鉄 神戸市営地下鉄「名谷」駅 − 山陽バス「名谷駅」(垂水東口行) − バス停「クラブ前」又は「千鳥ヶ丘下」(約25分)下車すぐ
授業を公開する部・・・保育相談部・幼稚部・小学部・中学部・高等部/寄宿舎
指定授業・授業研究分科会を行う部 ・・・小学部・中学部・高等部
【助言者】
世界文化遺産姫路城の城郭内に、昭和23(1948)年に開校。保育相談部、幼稚部、小学部、中学部、高等部(普通科・生活デザイン科・工業技術科)を設置し、現在93名の幼児児童生徒が学んでいる。豊かに、確かに伝わるコミュニケーションを大切にしながら、日々の授業作りを進めている。
校訓「正 強 敬」のもと、進路をみすえた学力の向上とスポーツ活動・文化活動の推進に力を入れている。
「充実した言語活動を通して、学力を伸ばし、豊かな心を育む授業づくり 〜個を活かした支援の在り方〜」
本校では、コミュニケーション能力の向上、豊かな言語力の育成を目指し、自ら学び、思考し、判断する力の獲得を目標として、実践を進めている。平成24年度からは、「一人ひとりの個性や能力を的確に把握すること」「縦割りグループ別指導等学力を定着させるための指導方法や指導内容の検討と実践を進めること」「キャリア教育をあらゆる授業や場面に取り入れること」を重点目標とし、学部間で連携しながら実践研究を進めている。
保育相談部・幼稚部:「豊がなコミュニケーションを育む支援の工夫
〜個に応じた言語習得へのアプローチ〜」
小学部:「個に応じ、確かな言語の力を身につけさせるための支援の工夫」
中学部:「自ら考え、評価し、表現する力を伸ばすための支援の工夫
〜『言語技術』を取り入れた授業づくり〜」
高等部:「卒業後の社会自立をめざし、生きる力を伸ばす授業の工夫〜キャリア教育5領域10能力〜」
寄宿舎:「豊かな寄宿舎生活を送るための支援の工夫 〜主体的な言語活動を通して〜」
@ JR及び山陽電鉄「姫路」駅より徒歩15分
A (バス利用の場合) 神姫バス「姫路駅(北口)」乗車し「聴覚特別支援学校・好古園前」下車すぐ
授業を公開する部‥保育相談部・幼稚部
指定授業・授業研究分科会を行う部 ・・・ 保育相談部・幼稚部
(保育相談部) 庄司和史 先生 信州大学全学教育機構教職教育部 教授
(幼稚部) 松本末男 先生 筑波大学教授 附属学校教育局教育長補佐
保育日程 9:20〜10:00 授業公開 10:10〜10:50 指定授業
(※神戸校、姫路校と時間帯が異なるのでご注意ください。)
昭和48年、早期教育を行うための聾学校を西宮市に設置する計画が決定され、昭和50年全国唯一の幼稚部単置校、兵庫県立こばと聾学校として開校された。平成26年度には創立40周年を迎える。現在、保育相談部、幼稚部合わせ34名の幼児が保護者とともに通学している。地域支援を業務とする相談センター部も立ち上げている。保育相談部、幼稚部とも、公開授業と指定授業を行う。
「親子の豊かな共感関係を育むための保育」
子ども一人一人に応じた発達支援と、望ましい母子関係の形成を図るため、親子の指導・支援にあたっている。近年、聴覚障害にかかわる医療や補聴機器の進歩、子どもを取り巻く家庭環境の変化によって、教育にも対応が求められている。そこで、母子で楽しめる遊びを取り上げた研究授業に取り組み、母子でのあそびや絵本の読みきかせの場面で母親がどのようにかかわればよいのか、具体的な指導・支援の内容について検討している。
「考える力を育てるための話し合い活動」
人工内耳装用児の増加及び補聴器の性能の向上等の要因から、子どもたちの音声言語獲得は以前に比べ容易になった。しかしその一方で、じっくりと考えずにことばを発している場面も多くみられる。子どもの思考力を培うため、幼稚部では「話し合い活動」の授業分析を積み重ねている。子どもの心を揺さぶり、考えさせる場面をいかに作るか、子どもの表出をどのように受け止め、広げていくべきかをさらに研究し、教師一人一人の指導力の向上に努めていきたい。
@ 阪急電車今津線「仁川駅」下車 − 阪急バス35系統阪急逆瀬川行「新明和前」下車すぐ
阪急電車今津線「仁川駅」下車 東へ約2q(徒歩25分)
A 阪急電車今津線「逆瀬川駅」下車 − 阪急バス35系統仁川駅前行「新明和前」下車南へ100m
昭和23年に小・中学部を設置開校し、同年11月に寄宿舎を開設、昭和34年に幼稚部設置。本校は、兵庫県北部における聴覚障害教育の拠点として、地域のセンター的役割を担い、通級・巡回指導や教育相談を実施していろ。また、校訓「希望・努力・自立」のもとに、幼・小・中学部をとおして、一貫した教育を実践し、幼児児童生徒の障害の状態や発達段階に応じ、個に対応した課題を設定し、生きる力の育成を推進している。
また、遠隔地からの通学の不便さ等を補うための寄宿舎を合わせ有し、基本的生活習慣の確立、自主的、自立的態度の育成を目指している。現在、幼児児童生徒の数は29名である。
「コミュニケーションの力を高める指導」
重複障害を有するからこそ「丁寧なやりとりを通して子どもなりに『ことば』(身振り、手話サイン、発語、文字などを含む)で表現させたい」という理念の元に、コミュニケーションにおける受信活動の視覚支援、コミュニケーションの記録に基づいた発信活動の支援について研究してきた。さらに、コミュニケーション環境を整えた日々の授業で、子どもたちの思いや気持ちを育て、振り返り活動を繰り返す中で、指導者が共感できる力や、きめ細かい展開できる力を高める授業実践を積み上げたい。
・明日に役立つ授業作り
・生活自立・社会自立をめざして〜卒業後の姿を見すえて〜〈寄宿舎〉
・電車 JR山陰本線「豊岡」駅 下車 徒歩約20分
分科会名 | 分科会協議主題 | 助言者 |
主題設定の理由 | ||
早期教育 (乳幼児) 奈良校 |
乳幼児の全体発達を促し、コミュニケーションの楽しさを感じられる親子の関係づくりへの支援について考える。 | 信州大学 全学教育機構教職教育部 准教授 庄司 和史 氏 |
乳幼児の発達段階に合わせた活動を行い、親子のコミュニケーションを深めていくための支援の在り方、及びことばの基礎を培うための支援について研究する。 | ||
早期教育 (幼稚部) 京都校 |
学力の基礎を培うための言葉教育の指導実践と個に応じた支援の在り方について考える。 | 目白大学 保健医療学部 教授 齋藤 佐和 氏 |
近年、聴覚活用をする幼児の割合が増加している一方で視覚を併用する幼児も少なくない。子ども達が就学年齢に達して生来の能力に応じた学力を身につけていくためには、幼稚部においてどのような援助をすべきかについて、日々の保育計画や言語活動の指導実践に基づいて研究する。 | ||
自立活動 (聴能・発音) 生野校 |
補聴器等の活用、聴覚学習や発音・発語学習の実践を通して、生きる力に?がる自立活動について考える。 |
広島国際大学 総合リハビリテーション学部 言語聴覚療法学専攻 國末 和也 氏 |
補聴器や人工内耳など近年の技術進歩とともに、これらに対応する指導技術や技能が聾学校に求められている。情報保障のための機器の活用、聴覚学習や発音・発語学習の実践を通して日本語の習得を促すとともに、生きる力に?がる自立活動の在り方について研究する。 | ||
自立活動 (言語・障害認識・ コミュニケーション) 市立校 |
豊かな言語とコミュニケーションの力の育成と、社会的自立につなげる障害認識支援の在り方について考える。 |
愛知教育大学 教育科学系 教授 小田 侯朗 氏 |
子どもたちが豊かな言語力を身につけていくための方策について、指導方法や教育実践の在り方を協議する。また、障害認識の支援として、子どもたちの自尊感情の形成や、養育にあたる者の障害理解支援の在り方について研究する。 | ||
教科教育 (文系) 姫路校 |
基礎・基本の確実な定着と、自ら考え、課題を解決する力を育てるための授業づくりについて研究する。 | 筑波技術大学 障害者高等教育研究支援センター 障害者支援研究部 准教授 長南 浩人 氏 |
基礎的・基本的な知識や言語の力を習得させるとともに、これらを活用して必要な情報を自らつかみ、考え、課題を解決していく力を育成するための指導方法・授業改善について研究する。 | ||
教科教育 (理系) 神戸校 |
言語活動を充実させるとともに、論理的な思考力を高め、生きる力を育む授業づくりについて考える。 | 神戸親和女子大学 児童教育学科初等教育学コース 教授 井上 正人 氏 |
科学的・論理的な「ものの見方や考え方」を育み、その活用能力を高める理系教科の特性を生かしながら、言語活動を充実させ、主体的な探求活動の取り組みを進める授業づくりを研究する。 | ||
寄宿舎教育 滋賀校 |
豊かな発達や生きる力を育む生活指導や子育て支援について考える。 | 滋賀県立聾話学校 元教諭 森原 都 氏 |
豊かな発達や生きる力を育む上で必要な、@保護者や子どもたちを取り巻く「厳しい生活実態」をふまえることA子どもたちの多様な姿を受容することB一人ひとりの障害や発達を理解した上で指導すること、などについて研究する。 | ||
重複障害教育 豊岡校 |
個々の障害の状況や特性に配慮し、充実した生活を送るための教育活動を考える。 | 国立特別支援教育総合研究所 上席総括研究員 藤本 裕人 氏 |
障害が重度重複化・多様化する中で、聴覚障害を他の障害を併せ有する子どもたちの思いやニーズに応じた具体的な支援の在り方について研究する。 | ||
進路・キャリア教育 だいせん校 |
社会や時代の変化に対応したキャリア教育と進路指導について考える。 | 国立特別支援教育総合研究所 教育研修・事業部 総括研究員 原田 公人 氏 |
これまでの聴覚障害教育におけるキャリア教育と進路指導の成果と課題を整理し、雇用側から聾教育に求められる視点を踏まえ、これからの社会や時代の変化に対応したキャリア教育と進路指導、関係機関との連携の在り方について研究する。 | ||
総合的諸問題 和歌山校 |
聴覚障害教育に関わる諸問題について、様々な観点から総合的に考える。 | 大阪教育大学 教育学研究科 教授 井坂 行男 氏 |
一人一人の子どもたちの自立と社会参加に向け、必要となる支援や指導について、生活面・学習面等、様々な視点から捉え、具体的な実践や取り組みを基に、総合的に考え、聴覚障害教育の在り方について研究する。 | ||
センター的機能 堺校 |
聴覚障害教育におけるセンター的機能の意義と役割について考える。 | 大阪府立堺聴覚支援学校 非常勤講師 奈良教育大学 非常勤講師 加藤 登美子 氏 |
地域で学ぶ聴覚障害のある乳幼児児童生徒の自立と社会参加をめざし、「生きる力」と「豊かな心」を育むためには、聾学校を核とした指導・支援体制の構築が不可欠である。センター的機能を果たすための取組みについて実践報告等をもとに研究する。 | ||
国際教育・ 国際交流 |
グローバル社会に対応できる力を付けるための国際教育・国際交流について考える。また、海外の聴覚障害教育の現状について考える。 | 筑波技術大学 前学長 大沼 直紀 先生 |
世界の国々との関係がより深まる昨今、聴覚障害教育においても「異文化や多様性の受容と理解」「共生」「コミュニケーション能力の育成」が重要視されてきた。現代のニーズに合った国際教育・国際交流の在り方について研究する。また海外の聴覚障害教育の現状について知り、世界的視野に立った教育の在り方を研究する。 |
申込・受付の締切日 | 申込・送付先 | |
大会参加申込 (研究集録など含む) 研究発表申込 |
平成26年5月23日(金) | 兵庫県立神戸聴覚特別支援学校内 第48回全日聾研(兵庫大会)事務局 |
研究発表原稿提出締切 | 平成26年6月30日(月) | |
宿泊・昼食・シャトルバスの申込 | 平成26年5月23日(金) | 近畿日本ツーリスト株式会社(予定) |
第48回全日本聾教育研究大会(兵庫大会)事務局 〒655-0013 兵庫県神戸市垂水区福田1丁目3番1号 E-mail zennitiroken-hyogo(a)hyogo-c.ed.jp 大会実行委員長 矢野 博 |